景気回復や団塊世代の大量退職の影響もあり、日本の新卒採用の現場は売り手市場となっている。IT・エレクトロニクス業界の場合も、グローバルに事業を展開している企業も多いことから、皆さんのような海外経験豊富な学生の採用を増やしていきたいという傾向は当面続くだろう。
しかし、いくら売り手市場だからといって企業の採用基準が甘くなっているかといえば、そうではない。オープンに転職できる環境が整い、企業の中途採用制度が定着することで「新卒で採用できなかった場合は、中途で採用すればよい」という思惑が企業にはあるからだ。また、ユビキタス環境の普及に伴い、ITビジネスや企業をとりまく環境もハイスピードで進化しているため、すぐに即戦力となる人材を採用したいというのが、企業の本音なのかもしれない。
特に、留学生に人気の高い外資系のコンサルティング業界などでは、即戦力を求める傾向が強いのが特徴だ。そのため、ITやエレクトロニクスに関する専門的な知識や語学力を身につけるだけではなく、経営のセンスを磨くことも学生のうちから取り組んでおくことをオススメしたい。
ITソフトウェア企業では、システムアナリスト・コンサルタントといった上流のビジネスコンサルティング部門での採用が活発になっている。入社後は、分析力やプレゼンテーション能力といったコンサルタントのスキルを磨きながら、得意分野を持ったコンサルタントとして活躍することが期待されている。
また、例年通りSE(システムエンジニア)、システム運用・保守、プログラマーといった職種の募集も積極的に行なわれている。SEやプログラマーの場合は、採用時の学部学科不問で、入社後の研修で技術を身に付けていくというケースも多いようだ。そのため、ITスキルは乏しいがIT業界で働いてみたいという学生でも気軽にチャレンジできる職種といえる。
日本のIT業界の構造は、元請、下請、孫請等の多層構造で形成されていることから、コンサルティングファームやシステムインテグレーター企業の場合は協力会社と共同でビジネスを進めることが多い。そのため、これらの企業のスタッフには技術力だけではなく、協力会社のSEやプログラマーをまとめてプロジェクトを成功に導くための管理能力が必要になるということを覚えておいたほうが良いだろう。
次にエレクトロニクス企業では、各種メーカー系(家電・半導体・通信機器・自動車など)のエンジニア職での採用が増えている。特にグローバル市場で業績が好調な自動車業界では例年より採用人数を増やす傾向にある。海外に工場や拠点を開設してい る企業も多いことから、海外勤務や海外出張のチャンスが多い職場といえるのではないだろうか。その他では、電子機器が組み込まれたソフトウェアの開発を手掛ける組込系エンジニアやプログラマーの採用が活発化している。
IT・エレクトロニクス業界で業種や職種問わず、長年にわたり求める人材像のトップに君臨しているのが「コミュニケーション能力のある人」だ。学生にとっては意外かもしれないが、技術や知識よりもむしろコミュニケーション能力の評価に重きを置いている企業は多い。もちろん、ある程度の技術や知識を持っているという前提がある場合がほとんどだが。
ひと口にコミュニケーション能力と言っても、職種や与えられた役割によって求められる要素は当然違ってくる。例えば若手のSEの場合は、プロジェクトチームのスタッフとの間でスムーズに業務を進めるためのやりとり、プロジェクトマネージャーやチームリーダーへの報告、クライアントからの要望の引き出し提案や説明、といった能力が求められる。
特にシステム開発の場合はチームで業務を進めるので、コミュニケーション能力に加えて、協調性も必須となる。経験を積んだSEからは「常に協調性やコミュニケーション能力の重要さを痛感している」という声をよく聞く。SEやプログラマーとして高い技術があり多くの資格を持ってさえいれば、すぐに活躍できるというわけにはいかないのが現状だ。
それではどうしたら仕事に必要なコミュニケーション能力を高めることができるのだろうか? SEの先輩は「仕事ができると言われるSEほど、報告、連絡、相談や何でもメモを取るといったビジネスの基本を忠実に守っている」と教えてくれた。学生のうちから習慣づけておくことが、企業で活躍する第一歩になるかもしれない。

